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昼。ベッドから這うように起きて、とりあえずテレビの電源を入れる。ブン、と低い音を唸らせてから画面に光が産まれる。
『……は、お天気の良い日になるでしょう』
どうやらちょうど天気予報をやっている時間帯らしかった。棒読みにも近い女の声が薄暗い部屋に響く。その声を聞きながしながら、キッチンへ向かう。
「……一枚しかないな」
食べようと思っていた食パンは一枚しかなかった。仕方ないからそれを焼いて、ついでにコーヒーを入れる。今日はアイツ――ユウが来るからたぶんいろいろと買ってきてくれると思う。一応彼女だしな。
チン、と音を出してトーストが出来る。皿を取り出すのも面倒で、そのままキッチンで本当に軽い昼食を採る。
『次のコーナーはカップル生中継です。今日はこんなところです!』
何気無くテレビの映像を見てると、そこは近所の喫茶店の前だった。リポーターがあたりを見回してカップルを探す。カメラも周囲を写してゆっくりと映像が変わる。
「あ」
見間違えるはずはない。ユウだ。画面の中のユウはまだ仕事中らしく、早足で画面の外へ消えていった。
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