私の願望

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 月が廻って、幾つもの灯が消えてはついていった夜を越えた朝。私はいつもと変わらない時間に起きた。やっぱり、スグルはまだ寝てる。  スグルを起こさないようにベッドから出て洗面所へ向かう。 ――あれ?  何か嫌な夢でも見たのか、涙の後がほんの少しだけ残っていた。覚えていないことに限って、重要な意味を持っていたりする。……まぁこれは私の持論だけど。  とりあえず顔を洗ったりしてから朝食を採るためにキッチンへ向かう。トーストとコーヒーだけでいいや、なんて思いながら手を動かす。朝なんて軽い方がいい。  コーヒーを煎れている間に、着替を済ませる。そのあと、口紅を塗る前にコーヒーを飲み干して、食器は自動で洗ってくれるそれに突っ込む。 「行ってきます」  気付かないとは思うものの、一応声だけはかけて私は駅へと向かった。
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