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「ちょっと待てよ!」
勢いよく立ち上がり、茂みから出ようとすると、何かツルのような植物に足を取られて、辰実はその場に転んでしまった。
かっ……かっこわるい。と上体を起こしたが、辰実は頭を上げられなかった。
「大丈夫ですか?」
パタパタと小柄な女の子が駆け寄ってきたのが分かり、
「はい! 大丈夫です!」
と慌ててひざの砂を払って立ち上がった。
目付きの悪い男も目を丸くしてその場にいる。
もしケンカになることがあれば、最近覚えた柔道技で何とかしようと思っていた。
だが、体格的にどう見ても勝ち目はなさそうだと、声をかけた事を少し後悔し始めると、女の子が口を開く。
「ヒジから血が出てますよ」
「え? ほんとだ。どおりで痛いと思った」
言われてヒジを見ると、転んだ拍子にケガをしたらしい。
暑かったから脱いだブレザーがあればケガしなかったかも……。とのん気に分析しながらハンカチで押さえようとポケットに手をつっこもうとすると、女の子はハンカチを差し出してきた。
「使って下さい」
「え? 汚れちゃうから悪いよ」
断ったが、女の子は血が出ているヒジに、そっとハンカチを当ててくれた。
「ありがとう」 お礼を言い、女の子をマジマジとよく見ると、目がたれていて愛らしく、髪がふわっとしたかわいい子だ。
性格もいい子そうだし、こんな子が彼女なら男は幸せ者だなぁ……と、辰実は女の子にみとれた。
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