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大輔は口を結び、辰実の言葉に耳を傾けた。
辰実は和美の目を見て言葉を続ける。
「和美ちゃん、一人暮らしするんだったら、今までと同じ生活をしないとダメだよ。朝きちんと起きてごはんをしっかり食べて。学校にもきちんと行く。離れてる分、親に心配かけないよう電話したりとか……」
みんなからの視線を浴びている事に気付いた辰実は、何かおかしなこと言ったかな? と続きの言葉を留めた。
夕日が、たたずむ四人を照らしている。
少しの沈黙の後、
「何かあったら必ず連絡するから。今の家で一人暮らしをさせて」
再度和美が強い口調で大輔に訴えた。
公園内を通る高校の生徒が何事だろうという好奇な目で四人を見ている。
しばらく大輔は和美の目を見ていたが、これ以上は無駄な抵抗だなと観念し、
「寂しくなったら、大阪に来い」
と、一言だけ言ってその場に背を向けて歩き始めた。
一瞬驚いた表情を見せた和美だったが、去っていく寂しそうな背中に、
「ありがとう。お兄ちゃん」
と返した。
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