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お好み焼きを二人で四枚たいらげ、ビールを二~三杯飲み終わる頃になると、店内はお客さんが増えてきて外に並んで待つお客さんも出てきた。
これ以上長居するのも悪いので、会計を済まして辰実と瑛一は外に出た。
「ありがとうございました!」
おばさんが見送りに外に出てきて、辰実の手に五千円札を握らせた。
返そうとすると、
「今日はおじさん、おばさんのおごり」
と、おばさんは、あたたかいふっくらした手を引っ込め、
「これからよろしくね」
とやさしく微笑んだ。
辰実は申し訳ないと思ったが、気持ちを受け取り、
「こちらこそよろしくお願いしみゃす」
ろれつが回らなくなっている口調でお礼を言う。
ノンアルコールビールでも酔うのかな? と不思議に思いながら、
「ごちそうさまでしゅ……す」
とようやく言うと、
「また明日ね」
と言いながらおばさんは店に戻った。
辰実は、払ってくれた瑛一にお金を渡そうと差し出すと、
「いいよ。タツもらって。騙して連れてきちゃったからさ」
と断った。辰実はすかさず、
「俺もバイト探してたから助かったよ」
と返す。
そんなやり取りをしていると、夜道から見覚えのある顔が見えた。
「ヒロ!」
二人に急に名前を呼ばれてびっくりしたヒロは駆け寄り、
「おっ! 何? 二人でお好み焼き食いに来てくれたの?」
と聞いた。
ヒロはTシャツにジャージ姿で、Tシャツは土で汚れて真っ黒になっている。
瑛一はお好み焼きを食べて膨れたお腹に手を当てた。
「今、食い終わって帰ろうとしてたとこ」
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