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薄暗い街灯の道を二人で並んで歩いていると、何かを思い出したように瑛一が問いかけた。
「タツって好きな子いんの?」
急な問い掛けにぼんやりと鈍い頭で辰実は考える。
会って再確認した気持ちを瑛一に少しでも伝えたいと思い、辰実は真っすぐに瑛一の目を見た。
「……三年前に会った人で、忘れられない人がいる」
会って、また瑛一を好きになったよ。さりげないやさしい気持ちをいつもくれる人。そう思って。
「――」
瑛一もまた辰実をみつめ返す。
「三年前ってけっこう前だな」
「そう……だね」
瑛一は空を仰いで続けた。
「俺には三年も思い続けるのは無理だわ。タツはすげーな」
さらっという瑛一の言葉に、辰実の胸がちくっと痛んだ。
心地いい空間が醒め、頭もだんだんはっきりしてくる。
……瑛一にとっては過去のこと。現実を突き付けられた気がした。
「瑛一は、好きな子いるの?」
話題を変えたくて辰実は聞き返す。
瑛一は、頭をかいて少し照れながら、言った。
「……和美が好き」
聞かなきゃよかった……と辰実が後悔したことは言うまでもない。
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