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家を出て、途中のキャンプ場で五時間くらい仮眠し、二日めの夕方にして、やっと海の見える街に着いた。
海の匂いがする海岸線沿いを自転車で走る。
あまり人の姿はない。
道路沿いに線路があるが、電車の姿は見ていない。
二日間の走行で、足はガタガタと震えていたが、目の前に広がる海や波の音に癒されながら瑛一は自転車をこぎ続ける。
ちょっと休憩しよ、と思い、どこか休むのに適した所はないかとキョロキョロと辺りを見回すと、瑛一の前方に人影が見えた。
横顔しか見えないが、同い年くらいの女の子だ。
防波堤に肘を付き、海を見てたたずんでいる。
サラサラとした腰まである長い髪は、海風になびかれていた。
その姿に、瑛一は目を奪われた。
少し緊張しながら女の子の横を通り過ぎてしばらく行くと、背後で大きな水音がした。
『まさか!?』と思って振り返ると女の子の姿はない。
バシャバシャと水を撥ねる音。
瑛一は自転車を飛び降り、無我夢中で女の子が見える海に飛び込んだ。
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