1813人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
桜を見ながら、辰実はぼんやりと思い返した。
……そもそも、なんで男の格好をしてるんだっけ。
……いやいや。当初の目的を忘れる所だった、とシャンと胸を正す。
自分の夢の為の資格を在学中にとれる学校。
それがここ――青華男子専門学校だ。
青華男子専門学校は、十五年前にできた学校で、三つの学科に分かれている。
情報科、建築科、デザイン科である。
青華専門学校を出た卒業生は、世間に名を轟かすことも少なくない。
義父の力添えで、女の子という事を隠して受験し、無事入学できたら男の子として過ごすこと、ばれたら即退学の条件付きで、義父の悪友である理事長にお願いし、入学できた。
辰実は建築科を希望して受験をし、見事合格して、条件を飲んで今に至るというわけだ。
でも入学出来たはいいが、隠し通せるか、不安はある。
まぁ、でもなんとかなるか。男子校っていう未知の世界にも興味あったし、素敵な男の子とお近付きになれるかも。と、当初の目的を完全に忘れつつ、自分のクラスである一年A組に、辰実は足取り軽やかに歩き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!