三年前の出来事

7/12
前へ
/326ページ
次へ
  「ごめん。俺、変な事言ったかな?」  自分の中の初めての思いに、瑛一は戸惑い、慌てて聞く。 「びっくりしただけ」  その様子を見ながら、フフッと辰実は微笑んだ。 「やっと笑った」  瑛一は、微笑んだかと思ったら急に口を閉ざした辰実に話し掛けた。 「何かあったの? 会ってからずっと張り詰めた顔をしてるよ」 「……」 「よかったら話してよ。俺じゃなんの力にもなれないかも知れないけど、話を聞くことは出来るじゃん?」  辰実は戸惑いを隠せない顔で黙って聞いていた。  瑛一は辰実の顔をじっと見て続ける。 「しゃべったらきっと楽になるよ。海に飛び込むくらい思い詰めてるんでしょ?」  瑛一の言葉に、辰実は正直驚いた。  確かに、辰実は自分から海に飛び込んだ。  ……あの高さから飛び降りた位では死ねないことも知っていたのに。  ……でも、自分を消してしまいたくて飛び込んだのだった。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1813人が本棚に入れています
本棚に追加