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瑛一の言葉に辰実が顔を上げると、にこっと微笑みおでこにキスをしてきた。
頭の後ろを押さえられ瑛一の腕の中に再度戻される。
初めての温かな感触に辰実の心は次第に落ち着いてきて。
自分がどうしたいのかを考えることができた――。
……母親を幸せにしてあげたい。
新しい父親を認めたい。母親を幸せにしてほしい。
また、亡くなった父親を忘れないでいたい。
辰実の中で自ずと答えは出てきた。
……瑛一がいなかったら、自分は母親がもっとも悲しむ事をするところだった。
海に飛び込んで瑛一を巻き込んで死んでしまっていたら……。
自分が海に飛び込んだ事を母親が知ったら……。
「答え、出たみたいだね」
たくさん泣いてすっきりしたのが瑛一にも分かったらしく、辰実の目を見てやさしく微笑んできた。
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