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辰実は我に返ると、急に恥ずかしくなり、瑛一の肩にもたれかけていた頭を離した。
「何で離れるの?」
瑛一は辰実の手を引き、元の場所に辰実を戻し、サラサラした髪に指を通して遊ぶ。
髪をいじられるとこそばゆい。と、辰実がくすぐったそうに顔をしかめると、
「キス……していい?」
と言って、返事を待たないまま瑛一は辰実の唇に重ねた。
辰実は驚いて目を見開いたが、初めてのキスに酔いしれ、ゆっくりと目を閉じた。
唇がやわらかくて気持ちいい。そう思って。
瑛一もキスをするのは初めてだったが、思わず唇を重ねていた自分に驚いた。
辰実の体も、ちょうどよく自分の腕の中に納まり、ギュッと抱き締めると壊れてしまいそうな錯覚に陥る。
何度キスしただろう――。
辰実は温かな腕の中でそのまま眠りに着いた。
―――
翌朝、辰実が目を覚ますと瑛一の姿はそこになかった。
まだお礼もきちんとしてないのに……!? と、慌てて辰実が勢い良く部屋を飛び出し、玄関を開けると、自転車のタイヤを見ていた瑛一は驚いた。
「おはよ。どしたの?」
辰実のあわてぶりに、瑛一は目を瞬く。
「おはよ。……なんでもない」
辰実は間の抜けた返事をしたが、瑛一がいてくれたことに安堵の息を吐き、朝ごはんを作るためにキッチンへ向かった。
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