三年前の出来事

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   辰実は我に返ると、急に恥ずかしくなり、瑛一の肩にもたれかけていた頭を離した。 「何で離れるの?」  瑛一は辰実の手を引き、元の場所に辰実を戻し、サラサラした髪に指を通して遊ぶ。  髪をいじられるとこそばゆい。と、辰実がくすぐったそうに顔をしかめると、 「キス……していい?」  と言って、返事を待たないまま瑛一は辰実の唇に重ねた。  辰実は驚いて目を見開いたが、初めてのキスに酔いしれ、ゆっくりと目を閉じた。  唇がやわらかくて気持ちいい。そう思って。  瑛一もキスをするのは初めてだったが、思わず唇を重ねていた自分に驚いた。  辰実の体も、ちょうどよく自分の腕の中に納まり、ギュッと抱き締めると壊れてしまいそうな錯覚に陥る。  何度キスしただろう――。  辰実は温かな腕の中でそのまま眠りに着いた。  ―――  翌朝、辰実が目を覚ますと瑛一の姿はそこになかった。  まだお礼もきちんとしてないのに……!? と、慌てて辰実が勢い良く部屋を飛び出し、玄関を開けると、自転車のタイヤを見ていた瑛一は驚いた。 「おはよ。どしたの?」  辰実のあわてぶりに、瑛一は目を瞬く。 「おはよ。……なんでもない」  辰実は間の抜けた返事をしたが、瑛一がいてくれたことに安堵の息を吐き、朝ごはんを作るためにキッチンへ向かった。
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