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瑛一のやさしいキスに、辰実の目がとろんとなる。
「好きだよ」
耳元で囁き、瑛一はギュッと辰実を抱き締めた。
サラサラの髪が自分の首筋に触れて心地がいい。
「私も瑛一くんが好き」
つむった目を閉じたまま、辰実も瑛一に想いを伝えた。
ゆったりと、穏やかに時間が過ぎる――。
どれくらい時間が経ったのか。
瑛一は穏やかな寝息を立てて眠る辰実にそっと口付けて、家を後にした。
また、会いに来るから! と心に誓い、自転車をこぎだして。
―――
一ヶ月後、瑛一が再びその地を訪れると、家も何も跡形もなかった。
呆然としてその場に立ち尽くした瑛一は、もう二度と辰実に会えない事を悟った。
……一方、瑛一と別れた後の辰実は、その二週間後に、親の都合で引っ越しをしていた。
瑛一が会いにきてくれるかもしれないと、もといた家に何度か足を運んだが、タイミングが悪く、瑛一の姿を見かける事はなかった。
……二人の初恋は終わりを告げた。
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