再会

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   辰実が反射的に顔をあげると、そこには、『三年前に会った男の子、【肥田 瑛一(ヒダ エイイチ)】』の姿があった。  「どーも! 肥田瑛一です。よろしくー」  手をひらひらと振り、記憶と一致する爽やかな笑顔の男の子だ。  変わらない笑顔に、辰実の心臓が跳ねる。  どう反応すればいいのか分からなくて目を丸くしていると、後ろから声がした。  瑛一と話していた男の子だ。 「瑛一、お前唐突すぎ」 「え? いいじゃん。これからクラスメイトになるんだし」 「まぁそうなんだけどさ。ごめんねー。こいつ、誰にでもこんなんだから」  そういって瑛一のすぐ横に立った彼は、人のよさそうな穏やかな顔を向け、微笑んだ。  辰実は、自己紹介のチャンス! と、 「初めまして! 前島辰実(マエジマ タツミ)です」  慌てて椅子から立ち上がり、頭を下げた。  だが、緊張のあまり声が裏返ってしまった。  しまった! と辰実が何とか取り繕うと慌てていると、   「なんで裏返ってんの?」  と、瑛一は堪え切れずに笑い出す。 「お前失礼だよ」  そういう瑛一の横の彼を見上げると、あなたも笑いをこらえてますよね? ……と思わずつっこみそうになる顔をしている。 「俺は大野ヒロ(オオノ ヒロ)です」  わざと声を裏返し瑛一の隣の男の子は自己紹介をした。  それを聞き、とうとう瑛一は爆笑し始める。  つられて大野ヒロと辰実も笑い出した。  自己紹介が済んだところでちょうどチャイムが鳴り始め、瑛一とヒロはそれぞれ自分の席に着いた。
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