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みんなはガヤガヤと自分の部屋に入っていった。
未来も自分の部屋に入ると、ふうっとため息を吐いた。
これからどうなるんだろうか。沙也加にはああ言ったが、やっぱり怖い。お父さんとお母さんは、今何してるんだろう。心配しているだろうし、警察に駆け込んでいるかもしれない。帰りたい、家に帰りたい。
未来の胸に寂しさが募ってきて、涙が溢れてきた。未来は扉の前で膝を抱えた。
しばらくそうしていると、トントンと扉をノックする音がした。
「沙也加だけど、入っていい?」
「あっ、ちょっと待って!」
未来は急いで涙を拭いて、扉を開けた。
沙也加は入って来ると、未来の顔を見て驚いた顔をした。
「未来、泣いてたの?」
沙也加は未来の真っ赤な目を見ていた。
「うん、帰りたいなぁと思ってたら、涙が勝手に出てきちゃって。沙也加はどうしたの?」
未来も、心配そうに尋ねた。
「うん、ちょっとね」
沙也加は微笑んだ。その笑みに、いつものような明るさはなかった。
「魔法使いになるってさ、どういうことなんだろね?」
沙也加は不安そうだ。こんな沙也加を見たのははじめてだった。
沙也加はいつも強くて、泣いている未来を慰めてくれていた。友達の輪の中心にいる彼女が、何故自分のような泣き虫と仲良くしてくれるのかはわからないけど、未来は沙也加に頼ることしか出来なかった。
「分かんない。でもさ、さっき怖くないっていったけど、やっぱり怖い。家に帰りたいよ」
未来は俯いた。
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