710人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
沙也加は未来の肩をポンポンと軽く叩いた。それは、未来が泣いた時によく沙也加がしてくれる仕草だった。
「私も怖いよ。今すぐ帰りたい。……でもさ、香芝がいってたじゃん。『家族が傷つくのは嫌だ』って。私も嫌だな、私のせいで家族が傷つくの」
未来は頷いた。自分も嫌だから、リレンに着いて来た。けれど、不安を消すことは出来なかった。
不安を隠すように、未来は明るく言った。
「香芝、たまには良いこと言うね」
沙也加が笑った。
「そうね。あいつが、悪口じゃない言葉を言えるとは思ってなかった」
二人は笑った。確かに、香芝は未来に嫌味か悪口しか言わない。しかも、一人ではなく数人の手下を従えながらだ。
そう言えば、香芝の手下も二十人の中に居た。
「『魔法使いになってやろうじゃねぇか!』か、私もなってやろうじゃん!」
沙也加は笑った。
「じゃ、おやすみ。また明日ね」
「うん、おやすみ」
沙也加は手を振って帰っていった。
未来は寝室の扉を開けると、おもいっきりベッドに飛び込んだ。ベッドはふかふかだった。
「魔法使いになってやろう、か」
魔法使いになるという運命は、逃れようもなく未来を包んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!