扉の間

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沙也加は未来の肩をポンポンと軽く叩いた。それは、未来が泣いた時によく沙也加がしてくれる仕草だった。 「私も怖いよ。今すぐ帰りたい。……でもさ、香芝がいってたじゃん。『家族が傷つくのは嫌だ』って。私も嫌だな、私のせいで家族が傷つくの」 未来は頷いた。自分も嫌だから、リレンに着いて来た。けれど、不安を消すことは出来なかった。 不安を隠すように、未来は明るく言った。 「香芝、たまには良いこと言うね」 沙也加が笑った。 「そうね。あいつが、悪口じゃない言葉を言えるとは思ってなかった」 二人は笑った。確かに、香芝は未来に嫌味か悪口しか言わない。しかも、一人ではなく数人の手下を従えながらだ。 そう言えば、香芝の手下も二十人の中に居た。 「『魔法使いになってやろうじゃねぇか!』か、私もなってやろうじゃん!」 沙也加は笑った。 「じゃ、おやすみ。また明日ね」 「うん、おやすみ」 沙也加は手を振って帰っていった。 未来は寝室の扉を開けると、おもいっきりベッドに飛び込んだ。ベッドはふかふかだった。 「魔法使いになってやろう、か」 魔法使いになるという運命は、逃れようもなく未来を包んでいた。
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