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綾音は早雲の寺の本堂で必死に祈りを捧げていた。
『どうか、父上と静音が無事でありますように…。』
綾音が朝目を覚ますと、藤十郎は旅支度をしているところだった。
『父上…こんな早くに…。』
『綾音…起こしてしまったか…すまぬ。命を受け行かねばならなくなった。しばし留守になるが…何かあったら早雲殿のところへ行くとよい。』
藤十郎は今回の仕事が、かなり危険なものと察し早雲の元に一通の文を託してあった。
(謀反の動きあり。慎重に事運ばねばならぬ相手ゆえ、なにか身にあったら綾音と静音をお頼み申す。)
夜半に綾音と静音の寝顔を眺めた。
(二人共、本当に良き女子に育ってくれた。綾音は八重に似て、温かき心を持ち…人に安らぎを与える力があり…静音は明るき笑みでまわりに安堵を与える力あり。良き伴侶に出会い幸せになってくれ。…八重…二人を頼む…。)
藤十郎は八重から貰った守り袋を納戸の上に置いた。
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