~回顧~

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病室のドアに手をかけると同時にとても人の声帯から発せられるとは思えない猛獣の甲高い雄叫びに蒼の身体が固まった。 中で何かが暴れて物を壊す音と母のものと思われる叫び声が聞こえる。 「何が…」 確かめなきゃ… 気持ちとは裏腹に手が震え汗が滲みドアを掴む手に力が入らない。 中が静かになった。蒼は意を決死て震える手でドアを開けた。 ドアの隙間から鼻をつく生臭い匂いがした。 「ひっ!」 入ってすぐの所で奇異な姿勢で寝そべって首が真横に曲がっている数分前まで医者だった人の焦点が合わない濁った瞳と目が合った。手足は曲がってはいけない方向に曲がっていた。 奥で鈍い音がした。 「兄ちゃん…」
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