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「閃義!いるんだろ!…頼む…殺してくれ」
乖は判っていた。もう自我を保てない事を。もう戻れない事を。そして後ろで立ち尽くしている閃義の事を。
「頼む…これ以上は…」
こうしている間にも眼はどんどん充血していき、蒼に迫る右手を左手で掴み制していた。
「分かった」
閃義が冷静な声ではっきりと言い切った。閃義がゆっくり抜刀する音が聞こえる。冷静な声とは裏腹に手が震え鞘と刀身がぶつかり鳴る。親友、相棒として相方の不始末は自分が処理しなければならない。
「閃兄駄目だ!」
蒼の叫びを掻き消すように乖が叫ぶ。
「早く!」
蒼の顔に乖の血が飛び散る。乖の胸から刀身が突き出ていた。
最後に乖は蒼に笑いかけ「閃義ありがとな…蒼…強くなれよ…」と言い前のめりに倒れた。
「兄ちゃん…兄ち゛ゃー―ん」
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