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ぞわぞわと全身に悪寒が走り鳥肌が立つ。
後ろに何かいる。
背中に触れたそれは、服越しにも冷たさを伝えてきた。
何が後ろにいるのかはおおよそ検討がつく。
だからこそ振り向きたくないし、振り向いたらいけない。
しかしこのままでもいけない。
それから離れる為にゆっくりと一歩、足を前に踏み出した。
がしっ。
後ろのそれに右手を思い切り掴まれた。
「っ・・・・。」
体は一瞬にして硬直してしまった。
ぐいっ。
掴まれた右手が後ろに引っ張られる。
ぐいっ。
引っ張る力が更に強くなる。
このままだとまずい。
大きく息を吸い込み、動かない体に必死に力を入れるが、それでも容赦なく右手は引っ張られる。
くそっ。
くそっ。
必死の抵抗も虚しく、じりじりと体が方向を変えていく。
「ふぅ。ふぅ。」
腹の底から気持ち悪さが上ってくる。
こうなったら一か八か。
それが視界に入り込んでくる前に思い切り後ろ蹴りを放った。
「えっ?」
しかし蹴りは何にも当たる事なく空を切った。
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