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何もいない?
誰もいないのか?
しかし今だに手は強く握られたままだ。
と、次の瞬間、急に後ろに引っ張る力が無くなった。
その代わりに今度は下にずしんと重みがかかってくる。
ああ。
嫌な予感しかしない。
この予感が当たっていない事を祈りつつ、そっと右手を視線をやった。
「・・・・・っ。」
予感は的中。
右手には青白い、肘からしかない腕がぶら下がっていた。
「ううっ。勘弁してくれよ。」
思わず涙目になる。
こういう時こそ冷静にならないと。
ぎゅっと目を閉じ呼吸を整える。
握られた右手がやけに強く脈を打つ。
「とりあえず・・・・・腕を外そう。」
下を見ないようにしながら、左手で垂れ下がった青白い腕の指を開いていく。
その指は死後硬直を起こしているのかというくらい硬かった。
・・・・・。
ぼとっ。
全ての指を外し終えるとともに、腕が落下した音が聞こえた。
「ふう。」
気持ち悪かった。
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