メール6

7/10
前へ
/119ページ
次へ
何もいない? 誰もいないのか? しかし今だに手は強く握られたままだ。 と、次の瞬間、急に後ろに引っ張る力が無くなった。 その代わりに今度は下にずしんと重みがかかってくる。 ああ。 嫌な予感しかしない。 この予感が当たっていない事を祈りつつ、そっと右手を視線をやった。 「・・・・・っ。」 予感は的中。 右手には青白い、肘からしかない腕がぶら下がっていた。 「ううっ。勘弁してくれよ。」 思わず涙目になる。 こういう時こそ冷静にならないと。 ぎゅっと目を閉じ呼吸を整える。 握られた右手がやけに強く脈を打つ。 「とりあえず・・・・・腕を外そう。」 下を見ないようにしながら、左手で垂れ下がった青白い腕の指を開いていく。 その指は死後硬直を起こしているのかというくらい硬かった。 ・・・・・。 ぼとっ。 全ての指を外し終えるとともに、腕が落下した音が聞こえた。 「ふう。」 気持ち悪かった。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

931人が本棚に入れています
本棚に追加