パパはカゴの中の鳥

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でもね、それは、私たち家族がパパをよく知ってるからだって、ママが言ったの。 塔から出て、楽園の人たちと触れ合ったことがないから、楽園の人たちはパパがどんな人なのか分からない。 だから、楽園の人たちはパパが楽園社会に出てくるのが怖くてたまらない。 他の誰とも比べ物にならないすごい力を持った、年を取らない死なない化け物。 それが、楽園の人たちが知ってるパパ。 パパはそれを知ってる。 だから、みんなといっぱいお付き合いしたいパパも考えちゃう。 自分がどれだけみんなにとって怖い存在なのか。 そして、自分が他の人とどれだけ違うか。 だから、今は外に出たくても、パパの気持ちの問題で簡単には出られないんだって。 ずっと昔に、かまわず外を出歩けたのは、パパのお父さんやお母さんやお爺ちゃんやお婆ちゃんや、兄弟とかいとことか、そういう、パパに近い人たちがいっぱいいたから、パパのことをよく分かっている人がいっぱいいたから、そして、まさか人では考えられないくらい若いまま長生きするなんて、パパはもちろん、みんな知らなかったから、だから、出歩けたんだって。 パパは自分で自分を化け物だって思っちゃった…。  パパ。 パパは化け物じゃないよ? だって、私を呼んでくれる声も、抱っこしてくれる腕も、ちゃんと温かくて優しいよ? 何度でも言ってあげたい… 大好きなパパ。 何度でも言ってあげる。 だから、パパは自分を化け物なんて思わないで。  いつか。 いつかきっと、いっぱいお勉強して、中央庁に入って、筆頭衆に仲間入りして、パパが外を歩けるようにしてあげるからね? それまで、もう少しの我慢だからね? 外を歩けるようになったら、湖に昼時間に出かけて、みんなでお弁当食べようね。 そして、今まで行けなかったママの実家のお婆ちゃんちにも、一緒にお泊まりに行こう。 パパがしたかったこと、いっぱいしようね! 今は、カゴの中の鳥みたいに、塔の中にいなければならないパパは、本当は自由に空を飛んでもいい鷹のように、塔の外に出てもいいんだって、みんなに分かってもらわなきゃ。  私、がんばるからね! そして、ママの次に、私がパパのお嫁さんになってあげる! 同じクラスのダントンもかっこいいけど、パパは世界一かっこいいんだから! 頭もスタイルも顔もよくて何でもできちゃうすごい人なんだから!
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