パパはカゴの中の鳥

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パパはカゴの中の鳥

今の私たちの家は、王宮奥の太陽塔なの。 太陽塔っていうのは、楽園を維持しなければならない代々の王が過ごす場所で、巨大なピラミッドの形をしているの。 パパが王位を継承するまでは、強い力といってもパパほどの強さを持っていない人ばかりが王になっていたから、念力増幅機を身につけて、ピラミッド型の塔の中で更に力を増幅させて、やっと楽園を維持していたの。 パパは、初代王シャルバの生まれ変わりと言われるほどの人だから、そんなもの本当は必要ないんだけど、太陽王は塔にいれば安全に楽園を維持できるんだっていう時をずっと過ごしてきた楽園の人たちが、王が塔の外に出ることを許さないの。 みんな、王が塔の外に出たら、楽園がつぶれるって思っているみたい。 だから、必要もないのに、みんなが安心できるようにってパパはずっと塔の中で閉じ込められているの。 パパは、ずっと筆頭たちとの会議で外出許可を議案として提出しているんだけど、今はもう、その議案は議題にも出してもらえないんだって。 ママは、維持しやすいように塔に入るんであって、維持するのに困らない人を安心のために閉じ込めるのはおかしいのにって言ってる。私もそう思う。 ママが言うには、パパはすごく働き者らしい。 ママに言われなくてもそう思うけど… だって、家事とかいっぱい手伝っているんだもの。 パパは、地球にいたころ、アルバイトをいっぱいしてたんだって。 いろんな事情で家族から少し距離を置こうとしていたパパが、育ててもらっているうしろめたさと自分の夢を叶えるためにお金を貯めたくて、家の手伝いやアルバイトを頑張っていたって、ママに聞いたの。 パパは、地球にいたころは、自分が楽園の人間だとか当時の家族が血の繋がらない里親家族だとかいうことは全く知らなかったんだけど、何かややこしいゴタゴタがあって家族と一時的に心のスレチガイとかいうのがあったみたい。 でも、そんな事情があってもなくても、パパはとっても働き者で、あんまりじっとしているところを見たことがない。  少しはあるけど… それは、パパが太陽塔の大窓から見える塔の外をじっと見ている時。 その時は、いつもいっぱい甘えさせてくれてお話もいっぱい聞いてくれるパパでも、ちょっと話しかけづらい。 きっと、外に出たいんだろうなあ…って、私でも分かる。
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