みずきとるり子

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あれから10日が過ぎていた。 あの日大広と高田組長の話しを聞き帰り際に新宿署から何故か電話が入り 俺の車の引き取りを要請してきた。 . 俺に連絡が取れない時は組に電話を入れて来るのだ 俺は受話器の向こうの交通係に保管を頼み最後に大広に信二との面会時間を確認して部屋に戻ってきたのだ。 . 確かあの大宴会の時は今度の日曜と聞いた気がしたが俺の間違いなのか あの日から10日目の日曜の朝だった… この10日間の歌舞伎町はやはりあの学生運動の余波を受けいつもの半分の人出しか無い。 . お蔭様でピエロは連日閑古鳥が鳴いていた その変わりかどうか分からないが山手線周辺の寂れた歓楽街に人が流れた様で大森の源氏は思いがけなく連日大入りで 女の子も休む暇無く毎日5~6人の客を取っていた。 俺はその間ピエロには行かず 松井と共に源氏の稼ぎにせいを出した… . 俺はベットから物憂く起き上がりパンツ一丁でキッチンえ行きコ-ヒ-を落とし くわえ煙草でベランダの窓を全開にして空気を入れ換えた。 俺はベランダの椅子に座り 煙草の灰を散らかしながら みずきや るり子が出て行ってから10日余り 俺の部屋も辛気臭くなったもんだと…フンッ!!まぁしゃぁ無いか?と 一人ブツクサ言いながら吸い殻を枯れた鉢植えに投げ入れ 振り返りダイニングの時計を見た…8時かっ! なんでこんな早く目が覚めるんだっ! . 香ばしいコ-ヒ-の臭いが立ち込め 俺は一人コ-ヒ-片手に又ベランダに寄り掛かり かなり向こうの工場群のその又向こうの大森海岸に浮かぶ豆つぶの様な船を意味も無く数えた 右手のはるか向こうには微かに羽田なのか 早朝から九州か北海道でも飛んで行くのか いましがた飛び立った飛行機がまるで玩具の飛行機の様に見える。 俺は煙草が指先を焦がす熱さに我に帰りふと自分が何をやっているのか可笑しかった 背後でガサガサと音がした 俺はギョッとして振り返り更にビックリした. いつ入って来たのか るり子が 華やかな笑い顔で立っていた 「お前っ いつ入って来たっ!」 るり子は にっと笑い 「いつでも良いじゃん みずきちゃんから鍵もらったからね 大クンがいなくても掃除に来て上げるょ… そんな事より お腹空いたでしょう 朝ご飯作るね」 とキッチンに消えた 俺はあれ以来るり子になんの連絡もしていない るり子が言った 「いつ迄もパンツじゃダメじゃん…」
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