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一章:友達、いないだろっ?
1 プロローグ
森を雨が覆っている。降る雨は、時々吹く風に乗って寒さを運んでくる。
その森の中、一本の木の下で一人座っている影があった。
体の線から言うと男であろう。服の袖からのぞく腕を見ると、まだ若いと見える。
青年は、地表に現れている太い木の根っ子の上に足を投げ出して座っていた。背を木肌につけ、ややうつむき加減。
顔の方は雨よけ代わりにかぶっているマントのフードでよく見ることができない。
ふと空を厚く覆っていた雲が薄くなり、今日初めて太陽が顔をのぞかせたが、もう沈みかけていた。
太陽は今日最後とばかりに赤く強く輝き、その光の反射がとても美しい色のハーモニーを見せてくれていた。
赤からオレンジ、そして闇と混じりあうような紫を浮かび上がらせる。
その光景はとても神秘的だった。
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