下界~出会~

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こんな時間に外を出歩くのは久しぶりだ。   5月の澄みきった空。 たまには悪くないかも。   辺りは登校中の高校生がまばらに歩いている。       「立花~!おはようさん!」   隣を私と同じ高校の男の子が走り抜けた。 遠くにいる、いかにも真面目そうな眼鏡君が振り返った。 そして並んで歩き出す。 風に乗って、二人の声が聞こえてくる。   「世界史だっけ?」   「そ…。昨日、予習したんだけどわっかんねぇ~!」   朝っぱらから勉強の話。 楽しいのかねぇ? 私にとっては何の役にもたたないあんなもの、どうでもいいけどね。   もっと見たり感じたり、やりたいことはいっぱいあるわ。       ふと足を止めて道端にしゃがみこんだ。   真っ白な綿毛をつけたタンポポ。   千切って息を吹きかけると、風に乗って空高く舞い上がった。       今日はのんびり空でも見ますか。   下駄箱で上履きに履き替え、そのまま屋上へと向かう。       なぜそう思ったかは分からないけれど。 良い事がありそうな予感がしたの。
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