下界~出会~

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うちの学校の屋上に鍵はかかっていない。   規制さえしなければ、屋上なんて誰も来ないものだ。 暑いし。 眩しいし。   よく物語の中でサボリ場所として登場するけれど。   そんな風に考えるのは、世間知らずのお坊っちゃんぐらいだ。 居心地悪い所でサボるバカはいないっつーの。   案の定、扉の向こうには誰もいなかった。 誰もいないからこそ、この場所が好き。 私は変わり者なのかもね。       私だけの世界。   ごく普通の公立高校の屋上。 屋上の入り口の屋根の上。 この学校で一番高い場所。一番太陽に近い場所。   ここが私の定位置。 辺りの景色が一望できる。       私はここで誰かを…待ち続けている。 なんとなく、そんな気がする。   照りつける日差しは大切な誰かを思わせる。 そよぐ風は誰かに頬を撫でられるようで。   大の字になって、雲一つない空を仰いだ。       そんな時、突然扉は開かれた。
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