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ああ、しまった。失言だった。
『親子』ではないのだ、この二人は。
しかし、一瞬は一瞬、すぐにまた冴えない笑顔が戻ってくる。
「そうですね。子供っていうのは、強い・・・」
「時々、大人よりもね。はい、お醤油」
あたしは注ぎ終わったカップを吉沢に渡した。
「どうもありがとうございました」
来たときと同じようにペコペコして、吉沢は隣の部屋に戻っていった。
その夜、窓を伝う肉じゃがの香りと壁を通した里哉君の嬉しそうな声が、あたしの食欲を刺激した。
一度ぐらい、あの冴えない男が作った肉じゃがを食べてみたいかもしれない、なんて思った。
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