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放課後、無欠は一人、教室に残り一心不乱にシャーペンを紙の上で滑らしていた。彼は毎日のように人知れずこうして勉強をしている。努力だけなら、無欠はこの学校の誰にも負けないであろう……。しかし、なぜかいつも結果がついてこなかった。
いつまでたっても覚えられない用語に無欠が舌打ちをしたその時―
「水野くん……」
不意に声をかけられ、無欠は驚き肩を揺らした。振り返り確認するとそこには青い髪の可愛らしい女性が立っていた。
「青城さん?」
彼女の名前は青城 雪(アオシロ ユキ)。無欠のクラスメイトで成績が学年トップクラス。おまけに男子から人気がある女の子だ。
「また、テストダメだったんだ……」
「まぁね……」
無欠はまたバカにされると思い、素っ気ない返事をした。
「私は水野くんの努力を知ってるよ。毎日、ここに残って勉強をしてること……」
「え?」
無欠は驚き目を大きくする。
「水野くん、がんばり屋さんだもんね。努力の数なら一番なのに……なんで上手くいかないんだろうね……」
初めて自分の努力を認められ、無欠の心は温かくなった。無欠の頬が緩んだことに雪は気付き、人知れず微笑する。
「青城さん……。ありがとう……」
「うん。これからも諦めないで頑張って!!」
雪が無欠に笑みを向ける。そんな彼女の笑顔に無欠がドキッとした次の瞬間、
ズドーン!!
突然、思わず耳を塞いでしまうような爆発音がした。同時に建物がグラグラと音をたてて揺れる。
「きゃあっ!」
「何だ!?」
少しすると揺れがおさまる。無欠は何が悪い予感を感じとり、窓へ走る。
「こ、これは………」
一瞬、無欠は自分の目を疑った。無欠の目に写ったモノ…それは校舎から少し離れた位置で、暴れる巨大なネズミであった。巨大なネズミは体当たりを繰り返し、その数に比例して、次々と建物が瓦礫に変えられていった。
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