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無欠は廊下の真ん中で困り果てていた。確かに雪の後を追った彼だったが、途中で見失ってしまい、今ではどうすればいいか混乱までしてしまってしる。彼の額に嫌な汗が流れる。
青城さんをおいて非難すべきか……。それとも合流できるまで捜すか…。
無欠は自らの下唇を甘噛みし、思考する。雪は先に非難したのだと考えるのが普通だったが、無欠は不幸なことに用心深い性格で、楽観的に考えるなどできはしなかった。
あと、5分…捜してみよう……。
無欠は再び廊下を走り始めた。この行動が後に彼を戦場へと駆り立てさせることとなる。
「青城くん、おそいぞ!」
雪が行き止まりにある隠し扉に飛び込んだ時には、既に“他の四人のメンバー”は集まっていた。雪は一言、謝りながら現状をモニターで確認する。雪の目にはまるで怪獣映画のワンシーンのような惨状が映っていた。
「どうする? まさか、見過ごせとは言わねぇよな」
壁にもたれ掛かり、目を閉じている青髪の少年が声をあげる。やがて瞼を開け、鋭い黄色の瞳で部屋の中央の白衣の老人を睨む。
「もちろんじゃ、この日のためのプロジェクトじゃからな…」
老人は立派な白い髭を弄る。その目には何か期待のようなものが見てとれた。老人の名は天文寺 雷蔵。ある分野で有名な科学者である。
「一号機のパイロットがいないが…?」
青髪の少年が体を起こし、雷蔵の所へ歩き出す。彼の名は鎌倉 紅矢(カマクラ コウヤ)。無欠や雪と同学年で、雪と同じく学年トップクラスの成績優秀者である。
「仕方あるまい……。青城くんと鎌倉くんの二人で頑張ってもらうしかないのぉ……。二号機、三号機の発進準備は整ったか?」
雷蔵は振り返り、キーボードをさっきから忙しなく叩いている少女を見る。
「待たせた……」
薄いピンクの髪の少女は表情を一切変えず、返事をした。彼女はシャリオ・メクトロ。無欠より1つ上の学年の優等生である。
「初めてなのに、10分もかからなかったの。 さすが、シャリオくん。大したもんじゃ」
不謹慎にも雷蔵は大声で笑う。どこか楽しそうでもあった。
「敵の分析結果、出ました。三機いない今でも十分、戦えるハズです」
シャリオの横でパネル操作をしていた金髪の童顔の少年がずれた眼鏡を直しながら言った。
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