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「俺を気に入っているっていうのは、藤宮の勘違いだと思うぜ。こうして一緒に居るのは、お互いを監視する為さ」
「どういう事?」
意味が分からなくて問い返すけれど、護はそれ以上話してはくれない。
「さてと、俺は次移動だから先に戻るわ」
「うん」
芝を払って立ち上がる護を見送り、颯に視線を戻す。
中庭を駆ける風が、颯の髪を揺らしていく。
額にかかった前髪がくすぐったかったのか、颯の眉間に皺が寄る。
でも下手に手を出すと颯を起こしてしまうから、そのままにしておく。
やがて予鈴が鳴り響く。
「颯、予鈴が鳴ったよ。起きて」
肩を揺すってみるけれど、颯の反応はナシ。
「颯、起きてってば」
頬を軽く叩いてみても反応は皆無。
このまま颯を置いて行くわけにもいかないし、かといって授業に遅れるわけにもいかない。
「サボっちゃえ」
颯の頭を膝に載せたまま、僕は芝生の上で横になる。
青い空を流れる雲を見ていれば、僕も睡魔に襲われた。
「美希、起きろ」
身体を揺すられる感覚に、僕の意識が浮上する。
「おはよう。颯」
目を開ければ颯のアップ。
「おはよう。それより早く教室に帰らないと6限が始まるぜ」
腕時計を見れば颯の言う通りだった。
僕達は急いで教室に戻った。
初めて授業をサボった日は、
君と一緒に眠ってしまった日。
あの後が大変だったけど、
楽しかったね。
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