幻惑の夏

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   どれだけの時間が経ったのだろう。  いきなり背中に冷たい感触。  「うぎゃ~」  その正体を見た僕は、情けない悲鳴を上げてしまった。  それを見て爆笑する二人は、当然、颯と護。  「なっ、俺が言った通りだっただろう」  茶目っ気たっぷりに言うのは護。  「本当だな。これで美希の弱点が分かった」  肩を震わせて告げたのは颯。  一体、何を考えているんだか。  「誰だっていきなり魚を当てられたら、吃驚するに決まっているじゃん」  そう。  僕の背中に当たったのは、釣ったばかりの魚だった。  「まさか、あそこまで驚くなんて思わなかったんだよ」  「美希、悪かった」  「二人共、笑いながら謝ったって、全然誠意なんて感じないよ。罰として、夕食は二人に作ってもらうからね」  これぐらいはいいよね。  僕を驚かせたんだもん。  心の中で舌を出しながら、二人が夕食の支度をするのを、僕は傍観していた。  だけど所詮は男ばかりのキャンプ。  一泊だけというのも手伝って、夕食はバーベキュー。  材料は、颯のお父さんが車で運んでくれたんだ。  鉄板の上では肉や野菜、二人が釣ってきた魚が焼かれている。  高校一年生の標準身長を遥かに上回る、二人の食欲は凄まじいモノがあった。  鉄板で焼かれている食材がたちまち消える。  僕はというと、次々と載せられる肉や野菜を食べるのが精一杯だっていうのに。
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