始まりの春

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       春まだ浅い三月。  僕の住むこの町では、まだ雪が残っている。  この雪が溶けて、緑の大地が姿を見せるのは、四月を過ぎてからだ。  凍った路面に足を取られないように、慎重に歩を進めながら、首に巻いたマフラーを少し緩める。  「藤宮(とうみや)、とうとう合格発表の日だな。俺、緊張してきた」  僕の背中を軽く叩き、そう言ってきたのは親友の田口護(たぐちまもる)。  「護は合格圏内なんだから、大丈夫だよ。僕の方が不安」  「藤宮なら大丈夫だ。とにかく行こうぜ」  護に急かされて、僕達は受験を受けた高校へと足を運んだ。  掲示板の前には、早くも人だかりが出来ていて、皆、自分の受験番号と照らし合わせては、友人や家族と喜びあっている。  中にはダメだったのか、肩を落としている人、泣いている人の姿が目に映る。  僕はどっちの仲間入りをするんだろう……?  不安と期待が入り混じる中、僕は人波を掻き分け掲示板と向き合う。  「2105番は……と」  左から右へと移動しながら、僕は自分の番号を探す。  「あっ、あった……」  もう一度、受験票と見比べて小さくガッツポーズなんかしてみたり……。  この高校を第一志望にしていた僕は、滑り止めなんて受けていなかった。  もし落ちたりしたら、高校浪人が確定。  そんな事になったら、両親に何を言われるか分かったものじゃない。  恐らく家でやきもきしているであろう母に電話をして、合格した事を伝える。  
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