始まりの春

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   そう慰めてみるけれど、効果があったようには思えない。  相変わらず落ち込んだままの護と一緒に、僕達はそれぞれの教室へと向かった。  「しかし、見事に男ばかりだな」  教室の後ろの席に並んで座りながら、颯がぼやく。  「仕方ないよ。今年共学になったばかりなんだもん。来年には女子も入ってくるよ」  そう。  この高校は去年まで男子校だったんだ。  そのせいか、今年から共学だというのに、女子の入学者は0。  颯がぼやくのも無理はないよね。  「まあ、俺は美希がいればいいんだけどな」  「颯、僕は女の子じゃないんだよ」  怒ってみるけど、颯には通用しなかった。  どうして僕が彼を名前で呼ぶようになったのか。  それは颯のこの一言が始まりだった。  「俺だけ美希って呼び捨てにするのは不公平だから、美希も俺を颯って呼べよ」  入学式の途中で、こっそり耳打ちされた言葉。  だから僕はそう呼ぶようになったんだ。  入学式の日  僕と君は名前を呼び捨て合う  仲になったね  君との距離が少し近くなった瞬間   
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