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桜の花も散り、若葉が眩しい五月の半ば。
僕の隣では、君が眠っている。
昼休みには中庭で、購買で買ってきたパンを食べるのが、僕達三人の習慣になっていた。
「美希、膝枕」
一足早く食べ終えた颯が、僕の返事も待たずにごろりと横になる。
それによって、太股に重みがかかった。
「お前、ズルいぞ」
焼きそばパンを食べながら、護が怒鳴るけれど、颯はもう規則正しい寝息をたてている。
「もう寝てるのかよ。藤宮、そいつの頭なんか降ろしてしまえ」
護はそう言うけれど、こうも気持ち良さそうに寝られてしまうと、無下にも出来ないんだよね。
「そうしたら、颯が起きるんだよね」
足が痺れた時に一度だけ、颯の頭を動かしたら、凄く不機嫌な顔で起きたんだ。
だからそれ以来、足を崩して痺れないようにしている。
「えらく気に入られたものだな」
護がそう言うのも無理はない。
入学して1ヶ月半。
だけど颯は、初めて見た時のように周囲に対して無関心を貫いていた。
最初の頃は、目立つ颯に話しかけていたクラスメイト達も、今では颯に近寄ろうともしない。
そして、颯に用がある時は何故か、皆僕を通して伝えさせようとするんだ。
それも仕方がないんだけどね。
だって、いつも僕の隣には颯がいるから。
「護の事も気に入っていると思うよ」
そう言えば、護の顔があからさまに不機嫌になる。
でもね、颯は気に入らなければ、いくら僕の親友でもこうして寝たりなんてしないんだよ。
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