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「早く帰ろうぜ」
蒼馬が言い、三人は歩き出す。
その時、
「またね、蘇芳さん」
と言って、ひとりの少女が三人のわきをすり抜けていった。
「悠姫、もう友だちできたのか?」
意外な思いで静馬が訊ねる。
蒼馬も一瞬、目を瞠った。
しかし当の悠姫は、あれは一体誰だろうというふうに首を傾げた。
彼女のほうに注意を向けていなかったし、あっという間に通り過ぎていってしまったせいで、顔がはっきりわからなかった。
「悠姫?」
双子が訝しげに訊ねると、
「前の席に座ってた子かもしれない」
悠姫は自信なく答えた。
「なんだそれは」
蒼馬が半分呆れて言うと、
「とにかく同じクラスの子なんだろ?」
静馬がフォローするように言った。
「友だちになれるといいな。明日会ったら自分から積極的に声かけるんだぞ」
悠姫は神妙な顔で頷いた。
「すごく綺麗な子だったんだ。長い黒髪でね、はきはきしゃべるし、ちょっとお母さんみたいだった」
自己紹介で佐々雅と名乗っていた少女を思い出しながら悠姫は言った。
そこはかとなく嬉しそうな悠姫を見て、双子は「よかったな」と笑った。
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