1、入学

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ようやく校舎にたどり着くと、 「なんかあのひとたち、わたしの名前知ってたみたいだけど、なんで?」 悠姫がのん気に言った。 「蒼馬なら新入生代表だったからわかるけど」 言いながら下駄箱を開けると、悠姫はそのまま立ち尽くした。 どうしたのかと、双子が覗き込むと、下駄箱の中も部の勧誘のチラシであふれている。 悠姫は手近の一枚を見る。 運動部の勧誘だ。 「……わたし、運動なんて苦手なのに」 「マネージャーだよ、マネージャー」 静馬が忌ま忌ましそうに言う。 蒼馬は悠姫の手からチラシを奪い、下駄箱の中のものもごっそり掴み出すと、そのままゴミ箱に放り込んだ。 「あ」 と悠姫が声を上げた。 「いいの捨てたりして。それに、もしかしたら入りたい部活とかあったかもしれないのに」 「いいんだよ」 蒼馬と静馬はそろって素っ気ない声を出すと、そのまま悠姫の教室までついてきた。 「どうしたの」 と訊ねる悠姫を無視して、ふたりは悠姫の机に手を突っ込んだ。 案の定、そこからも大量のチラシが出てきて、ふたりはそれら全てをぐしゃぐしゃに潰すと、またもやゴミ箱に放り込んだ。 「じゃあな悠姫」 「気をつけるんだぞ」 蒼馬と静馬はぶっきらぼうに言って、それぞれの教室に去っていった。 「すごい勧誘されてるみたいね」 と悠姫の前の席で笑ったのは、例の黒髪の少女だった。 悠姫は自分に話しかけてくれているとわかると、一瞬驚いてから急に嬉しくなり、 「そうみたい」 と笑って返した。 「あたしも結構もらったけど、あれほどじゃないな」 と彼女はつづけた。 「どうして名前知ってるんだろうね?」 「さあね。可愛い子、綺麗な子の情報は詳しいみたいよ」 「へえ……」 悠姫は、自分のことも易々とそこに分類できてしまう彼女に感心しつつ、やっぱりお母さんに似てる、と思う。
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