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「佐々雅。よろしくね」
彼女が言った。
「あ、はい。わたしは蘇芳悠姫。よろしくお願いします」
やけにかしこまった悠姫を、雅は興味深そうに見つめた。
「悠姫って呼んでいい?」
「もちろん」
「あたしのことも雅でいいから」
「……ミヤビ、ちゃん?」
悠姫はおずおずと言ってみる。
これまで日本で女の子を呼び捨てにした経験はないのだ。
アハハハハ、と雅は気持ちがいいほどさばさばとした調子で笑った。
「呼び捨てでいいって」
悠姫は雅の顔をじっと見ていた。
雅もすぐにそれに気付く。
「何?」
と問われ、悠姫ははっとした。
「あ、綺麗だなと思って」
雅は悠姫をまじまじと見つめた。
「悠姫って天然?」
「え? だって本当に綺麗だから」
嫌味でも何でもなく本心から言っているらしい悠姫を見て、雅は、聞いていたとおりだ、と思う。
悠姫は、無邪気で素直でいい子で、少し変わっている。
小学校の時の同級生、竹内美晴からの情報だ。
今まで周りにいなかったタイプだ、と雅は思う。
雅は中学で、ほとんど同性の友だちがいなかった。
早い話、嫌われていた。
「ちょっと美人だと思って」
と陰口を叩かれやっかまれていたし、成績も常に学年トップで、誰と打ち解けることもなく超然としていたので、女生徒たちは、自分たちのことを馬鹿にしている、見下している、と勝手にひがんでいた。
そういう同性たちが面倒くさくて、雅は自分から友だちを作ろうと努力さえしなかった。
しかし、悠姫となら。
「悠姫っておもしろいね。友だちになれそう」
と言う雅は、つい美晴との関係を説明しそびれた。
一方、悠姫はおもしろいという意味がよくわからなかったが、友だちになれそうと言われ単純に喜んだ。
「よかった。わたし、今まで女の子とあんまり親しくしたことなくて」
「ああ、あたしも中学じゃ全然友だちいなかったよ」
雅はあっけらかんと言う。
なんで? と訊く悠姫に、
「女は陰険でひがみっぽくて被害妄想激しすぎる馬鹿ばっかりだったから」
これまたあっけらかんと言う。
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