18人が本棚に入れています
本棚に追加
入学式は学校の敷地のはずれにある講堂で行われる。
父兄席と新入生席に分かれているだけで、席順は自由だった。
悠姫は蒼馬と静馬と並んで座れる席を探し、ふたりに挟まれて座った。
ぴったり膝をくっつけて、その上に両手をのせた悠姫は、
「緊張する」と小声で言う。
「なんでだよ。ただ座ってりゃいいだけだぞ」
静馬が笑う。
「……でもクラス分けとか。たぶん同じクラスにはなれないよね」
「まあ、三人ばらばらが妥当だろうな」
と蒼馬に言われ、悠姫はしょんぼりした。
今からもう、教室に行くのが不安になってくる。
入学式が始まると講堂内は静まり返った。
校長や理事長、その他いろいろな人の言葉は悠姫の耳に入ってこなかった。
じっと座ってはいたが、目はきょろきょろと周囲の生徒たちを窺っていたからだ。
右側の静馬は退屈そうに座っていた。
と、突然、左の蒼馬が立ち上がり、悠姫はびくっとした。
蒼馬が席を離れ、壇上に向かって歩いていくのを、状況が読めないまま目で追った。
「なに?」
悠姫は静馬に訊ねた。
「新入生代表の言葉だってさ。俺も今知った」
静馬も驚きの表情だ。
「あいつ、入試でトップだったんだな」
「へえ……そういうものなの?」
「まあ、ふつうはそういうもんだろ」
静馬は呆れ気味に言った。
「あいつは入試でもトップかよ。つーか、なんで秘密にしてんだよ」
ちょっと怒っているようでもある。
悠姫は今までさんざんよそ見していたが、今日はじめてまともに壇上を見た。
マイクの角度を調整ししゃべり出した蒼馬は、いつもどおり涼しい顔で、緊張の欠片も見えない。
最初のコメントを投稿しよう!