1、入学

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入学式は学校の敷地のはずれにある講堂で行われる。 父兄席と新入生席に分かれているだけで、席順は自由だった。 悠姫は蒼馬と静馬と並んで座れる席を探し、ふたりに挟まれて座った。 ぴったり膝をくっつけて、その上に両手をのせた悠姫は、 「緊張する」と小声で言う。 「なんでだよ。ただ座ってりゃいいだけだぞ」 静馬が笑う。 「……でもクラス分けとか。たぶん同じクラスにはなれないよね」 「まあ、三人ばらばらが妥当だろうな」 と蒼馬に言われ、悠姫はしょんぼりした。 今からもう、教室に行くのが不安になってくる。 入学式が始まると講堂内は静まり返った。 校長や理事長、その他いろいろな人の言葉は悠姫の耳に入ってこなかった。 じっと座ってはいたが、目はきょろきょろと周囲の生徒たちを窺っていたからだ。 右側の静馬は退屈そうに座っていた。 と、突然、左の蒼馬が立ち上がり、悠姫はびくっとした。 蒼馬が席を離れ、壇上に向かって歩いていくのを、状況が読めないまま目で追った。 「なに?」 悠姫は静馬に訊ねた。 「新入生代表の言葉だってさ。俺も今知った」 静馬も驚きの表情だ。 「あいつ、入試でトップだったんだな」 「へえ……そういうものなの?」 「まあ、ふつうはそういうもんだろ」 静馬は呆れ気味に言った。 「あいつは入試でもトップかよ。つーか、なんで秘密にしてんだよ」 ちょっと怒っているようでもある。 悠姫は今までさんざんよそ見していたが、今日はじめてまともに壇上を見た。 マイクの角度を調整ししゃべり出した蒼馬は、いつもどおり涼しい顔で、緊張の欠片も見えない。
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