18人が本棚に入れています
本棚に追加
「かっこいいね」
悠姫が呟くと、
「俺だって同じ顔だろ」
静馬が不満そうに言う。
悠姫はわずかに首を傾げ、しげしげと静馬を見た。
「うーん、そういうことじゃなくて。……あ、ううん、静馬もかっこいいよ。顔同じだし」
静馬は憮然とした。
悠姫は素直で、悪気なく、まったく自覚なしに嫌なツボを突いてくる。
よくあることだ。
あまり無邪気すぎると、よけいにグサリとくる言葉もあるのに。
静馬は少々恨めしげに悠姫を横目で見たが、悠姫の視線はじっと壇上の蒼馬にそそがれている。
蒼馬がトップなんてまぐれだ。
心の中で言ってみるが、まぐれでないことは静馬自身よくわかっていた。
双子なのにどうして差ができるのかと首を捻りたくなる時もあるが、双子だからこそ、蒼馬の優秀さが自分のことのように嬉しい時もある。
矛盾しているけれど。
何しろ当の蒼馬が冷めているから、代わりに喜んでやりたくなるのだ。
なんていい弟だ。
と自画自賛しているうちに蒼馬が席に戻って来た。
何をしゃべったのか全然聞いていなかった。
講堂を出る直前、式の最後に、上級生の合唱部員たちが校歌を歌ってくれた。
悠姫は合唱が好きだ。
昔、教会で聞いた賛美歌を思い出すからだろうか。
悠姫が余韻に浸っていると、周囲では椅子から立ち上がるざわめきが聞こえ出した。
最初のコメントを投稿しよう!