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「誤解?」
「えぇ。大体最初から詐欺などと疑ってかかられるから、こんな誤った解釈をなさるのです」
肩をすくめ、手の平を天に向ける……呆れている時のポーズなのだろうか。
「よいですか? あなたは実験台ではなく、この素晴らしい法律が出来るにあたっての試験をすることのできる、日本国民の中のたった三人に選ばれたのでございますよ」
それは、イコール実験台では――と思ったが、言うのはやめておいた。
「あ……えっと、試験……に選ばれて、そしてそれは絶対であり、俺は断れない。断れば渡邉さんに殺される――と」
「おぉ! なんとあなたは飲み込みがお早い! いかにも、おっしゃるとおりでございます」
渡邉は満足げに答えた。
「でも……」
「……でも?」
まさか口答えでも? ――というように、眉をしかめる。
「なにかご不満でも?」
「不満というか……」
「なんです?」
「何で俺が渡邉さんに殺されなきゃいけないわけ?」
渡邉は、先ほどと同様の呆れたポーズをとった後
「簡単なことです」
と言い、さらににっこり笑ってこう続けた。
「若草様の命は絶対であり、それに逆らうことはできません」
「逆らったら……殺されるなんて、そんなことあっていいのか?」
「今回は特別です。【人殺し権】は施行前に知られてはならないのです。そのために――」
「……そのために?」
「その【人殺し権】を試験する三人の中の一人に、私が選ばれているのです」
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