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「ひでぇ……」
俺は思わず呟いた。
「……ひどい?」
渡邉は眼鏡を外し、胸のチーフで丸いレンズを丹念に拭き、再びかけ直す。
「あなた……もしや若草様のことを支持してらっしゃらないのでございますか?」
その眼鏡の奥の目は、冷たく光っていた。
もしも支持していないと言えば、その瞬間に渡邉の持つ【人殺し権】で殺されるかも――俺は真剣にそう思った。
「いっ……いや、俺は政治に興味がないだけで……」
「そうでございますか」
渡邉は目を細め
「今後、発言には十分気をつけていただきたいものでございます」
と抑揚なく言った。
――本気だ
この男は、何かあったら迷わず俺を殺す気だ
「……分かりました。気をつけます」
俺の返事を聞いて、七三分けで眼鏡をかけたスーツ男は満面の笑みで大きく頷いた。
「私、滝沢様とは仲良くやっていけそうな気がしてまいりました」
「…………」
全然嬉しくない。
「――さて」
渡邉は、足元に置いていたアタッシュケースの中から書類を取り出した。
「それでは、こちらの契約書にご署名をお願いいたします」
目の前に差し出された用紙には、次のような契約内容が記されていた。
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