[1]現実と非現実の境界線

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男二人組はすぐに振り返った。結衣の指す先に何があるのか、もちろん私も気になり、見ようとした。 途端、腕を掴まれ、体を後ろに引っ張られた。 「ひゃっ!」 「走れ!!」 結衣の声を聞いて、私は即座に状況を理解する。引っ張ったのは結衣。指でさしたのはただの嘘。隙をついて逃げようとしたのだ。 私が理解し頷くと、結衣は私の腕を離し全力で走り始めた。 私も続く。 後ろなんて見ない。前を見て早く走る為ではなく、ただ純粋に怖かったから見たくない、という気持があるだけ。 アミューズメントのコーナーに着く前にナンパされた私達はこの大型デパートの専門店街というコーナーで彼らに話掛けられていた。 幸い、出口は近い。ひとまず外に出ようと、言葉は交わさなかったものの、私も結衣も大きなガラスの自動ドアに向かて駆けていた。 人だかり。 『……番組の途中ですが、只今より緊急、全世界同時特別生中継をお送り……』 出口付近、家電コーナーに設置されているテレビから流れていた中継。歩く人はその足を止め、立ち止まり、見入る。 私がその中継の内容を知るのは、もう少し先の事だ……。
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