[1]現実と非現実の境界線

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人間は本当に不便にできていると思う。 ついさっきまで、変わりのない毎日にうんざりしていたのに、急な変化が起こった瞬間、前の変わりのない毎日が恋しくなる。 自分が空想の中であれほど求めていた夢の様な力が、実際に目の前で見せつけられてしまえば思いは一変し、否定を始める。 人間って、本当に不便で、不器用なココロを持った生き物だと思う……。 九州・鹿児島 日本の中でも南に位置するこの場所は、一年を通しても暖かい、寧ろ暑い日の方が多く、冬と夏とでは大きな気温の差が生まれる場所。 近年、急激な速さで進んでいる地球温暖化のお陰もあって、更に南に位置する沖縄とも一年を通して気温の差はほとんどない。 生まれた時からこの場所に住んでいる人達はもうそんな環境にも慣れておりなんともないが、他県からやってきた人には夏と冬の温度差が辛いらしい。 「つー訳であじぃー……」 他県出身の人にとってここの夏は本当に辛いみたい。 今私の隣を歩いている、都会からやってきた彼女がこの夏の暑さにそう愚痴を洩らしているのだ。 誰かから聞いた話ではあったけど、間違いではないみたい。もう汗まみれで、暑くて暑くて、ホントに辛そうだもん……。
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