[1]現実と非現実の境界線

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今の季節は夏。夏休みの今はもう夏真っ盛りって感じ。 昼間の平均気温は毎日35度を越していて、熱中症で倒れた人もいるらしい。 「あついよぉー……」 さっきから暑い暑い言いっぱなしの彼女、親友の朝倉結衣(あさくらゆい)はもう猫背を通りこして、逆に辛いのではないのかというほど体を前屈みにさせ、両手をダラーんとさせながら私と並んで歩いている。 「ねぇ……暑い」 「うん、知ってる」 結衣とのこのやり取りにもう慣れてしまっている私の返事は素っ気ない。 7月頃から私に「暑い」と愚痴り始めるのは毎年で、その度に「知ってる」と返すのも毎年の事。 「うぅ……冷たいなぁ。暑くないの?」 「ん?そりゃあ私だって暑いよ。さっきまで体動かしてたんだし」 今は部活の帰り道。夏休みといったところでやっぱり部活に休みはなくて、平日は毎日学校の門をくぐっている。 私達は私立中学に通っている中学三年生。私は幼少時代から続けてきた弓道がやりたくて、結衣は純粋に学力があったから中学受験をして今の学校に通っている。 そして私達は二人一緒に弓道部に所属している。私にくっついて結衣が「私も!」といった勢いで二人一緒に入ったのが始まり。 部内でも結衣とずっと一緒に練習して、頑張ってきた。その努力が実ってか、私は去年の全国大会で優勝。結衣も弓道二年目にして全国大会に出場するまでの実力をつけたんだ。お陰で勉強には遅れ気味だけど……。
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