[1]現実と非現実の境界線

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でも結衣は違う。勉強もしっかりしているようで、前回のテストの順位もかなりよかった。私と同じだけ弓道をやっているのに、学力では私をおいてきぼりにしている。 本来なら尊敬できるけど、正直、スイッチの入ってしまった結衣を相手にしていれば、尊敬する気は失せてしまう。 「だったら、そうだね、ぐらい言ってよ。最近私への対応冷え冷えですよぉー、マイフレンドAさん」 後半ふざけた感じで言いながら、手をヒラヒラと、いや、ビラビラと私に向けて振ってくる。まるで変なオーラでも送るかのように。完全におふざけスイッチが入っている。 「もー、あっついんだからふざけてないで早く帰るよ!」 「その対応が冷たいって言ってるんですよーっ、マイフレAー!」 結衣から目をそらし、前を向いて早足で歩きだす私。そんな態度をとる私にふざけながらもちゃんと後ろから着いてくる結衣。 こんなふざけた彼女だけど、私は彼女を誰よりも信用している。 小学4年生の時に転校してきた結衣は、元気で明るくて、すぐにクラスに馴染んでいった。でも、当時私が結衣にもった印象はよいものではなかった。その頃いじめにあって、人と関わる事を極端に避けていた私にとっては最も苦手なタイプだったから。そして、いじめをしている主犯の子と性格がそっくりだったから……。 でも、結衣は私が初めにもった印象なんかすぐに蹴散らしてくれた。 私がいじめにあっていると知り、そして転校してきてから一番仲良くしていたその子がいじめの主犯だと知ると、すぐにその主犯の子から離れ、私の元に駆け寄って来てくれた。 あの時の結衣の優しい表情を、私は今もまだしっかりと覚えている。
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