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外へ出ると、眩しい光がふりそそいでいた。
そして、今立っているのが船の上だと、ようやく納得できた。
真っ青な海を、力強く船は進んでいる。
私は、ふらつく足元を気をつけながら、甘寧の後をついていった。
昨日、熱でふらふらしているのだと思っていたが、船の上だという事もあったかもしれない。
船の先端まで行くと、甘寧は振り向いた。
「泪。」
「はい?」
びっくりしながら返事をする。
「俺は、難しい事はよくわかんねぇ。でも一つだけ言っておく。」
「はい…」
何だろう?
「お前さんが、魏も、蜀も、この呉国も知らないってのは本当なんだと思う。それは信じる。だが、現実ここは呉だ。それに明日、明後日、命があるかどうかもわかんねぇ世の中なんだ。それはわかってくれ。」
「‥はい。」
私は下を向く。甘寧は嘘をつくような人ではないだろう。
…と、同時に恐怖が襲ってきた。
私はどうなるんだろう…?
「だがな、あんたが‘ニホン’からきたってんなら、そこに帰れるまで俺が守ってやるよ。」
「甘寧さん…」
その言葉に、私は涙がこらえきれなかった。
初めて、今までずっと心細かったのだと気づいた。
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