船の上

15/15
前へ
/450ページ
次へ
「泣くなよ…女の涙にやぁ弱いんだ。」 甘寧は、頭をかきながら言う。 「わかんねぇ事だらけで怖えかもしんねぇが、心配すんな。」 「ありがとう、ございます…でも、…どうして、こんな親切に、してくれるんですか…?」 私は、泣きながら甘寧に聞く。 「あんたは、困ってる奴を無視できるのか?」 甘寧は笑って言った。 「気にすんな。好きでやってんだからよ。」 「でも…」 「もう、泣くな。」 「はい…」 私は涙を拭いて、笑顔をみせた。 「とりあえず、もういっぺん化粧し直しだな。」 「ひどいです。」 私は膨れっ面になる。 甘寧は、ははと笑った。そしてふと、気付いたように、 「それから、気になったんだが…耳に付いてる、そりゃあ、なんだ?」 「…?これは…ピアスです。」 耳を触りながら答える。私の耳には誠からもらった、誕生石のピアスがあった。 「ぴあす?耳飾りの一種か?」 「えっと、耳飾りとちがって…耳たぶに穴を空けて、付けるんです。」 「あなぁ…?」 甘寧は、目を見開いた。 「よく、そんないてぇ事できんな。信じらんねぇ。」 「‥身体中刺青の、甘寧さんに言われたくないです。」 「ちげぇねぇや。」 私はここへ来て、初めてお腹の底から笑った。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2088人が本棚に入れています
本棚に追加