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『……隼斗、聞いてる?』
「……ん?あぁ、悪い悪い。で、何だっけ?」
自宅、自室にて。
先ほどあった母からの勉強の催促を無視し、隼斗はベッドの上で横になっていた。
片方の手には今日だされた“語学”の課題。
もう片方の手にはある人物に繋がっている携帯電話。
現在、時刻は午後9時を回ったところ。
結局、隼斗は今日、あの後すぐに学校を早退した。
頭痛がする、と適当な理由ではあったが、特に怪しまれる事もなくすんなりと学校を抜けられた。
本来帰ってくる時間よりも早い時刻の帰宅に、最初こそ母は心配してくれたが、今となってはもう勉強の事以外何も言ってこない。
自宅では勉強、学校でも勉強、正直、もううんざりだ。
右の手に持っていた課題を床に投げ捨てる。
バサバサと音を立てながら、プリントが四方八方へバラけた。
『隼斗、どうかしたの?何か音聞こえたけど』
「何でもないって。ところで、最近どうだ?元気か?」
携帯を定位置に当てて話しながら、一度寝返りをうち、床に転がっていたリモコンを拾い上げる。
『私は元気だよ。高校にもやっとだけど慣れてきたし、友達もできたし』
「……友達、って男だったりしないだろーな」
『フフフ、ご心配なく』
その穏やかな声に癒され、そして隼斗は安堵する。
今の隼斗にとって、唯一の癒しであり、唯一の楽しみであるこの時間。
携帯越しに聞こえる彼女の声は、隼斗の中に溜まっているストレスを一気に消化してくれる。
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