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「……はぁ……」
見るものを見終わりやっと一息、ではなく、出たのはため息。
もうただ呆れるしかない。
事件は柚子奈の住む街からさほど離れていない、だが決して近い訳でもない場所で起きていたらしい。
犯人は脳に寄生させて人間の思考回路を破壊し、死に至らすタイプの大変危険な新種のウイルスを使用し、無差別に人を殺めようとしていたようだが、警察による犯人発見が早かったようで大規模な事件にはならなかった。
だが未然に防ぐことはできなかったらしく、被害者も現在確認されているだけで数百人にのぼるとのこと。
運良くまだ死人は一人もでていないが、ウイルスにやられ意識不明の被害者も存在する。
隼斗はいつの間にか手放していた携帯をベッドから取り上げ、顔の横に持ってきた。
通話は切られていないようだ。
「ゆぅー?聞こえてるかー?」
『……遅ーい、バカ隼斗ー』
不機嫌そうな声が電話越しに聞こえてきた。
すぐに返事が返ってくるとは思ってもいなかった隼斗は一瞬だけ小さく驚き、おっ、っと情けない声を洩らす。
『やっと終わったのー?私より大事なテレビは』
「私より大事、って……別にそーゆー意味を込めてニュース見てた訳じゃないんだけど……」
テレビの電源を消し、ベッドの上で再び寝返りをうつ。
現在、時刻は9時30分を回ろうとしていた。
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