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「……ヤバ……」
小さな訴え。
だがその訴えは、誰も聞いてなどいない。
頭が未だかつてない程の痛みに襲われる。
限度というものを知らないのではないか、そう感じてしまう程の激痛に隼斗は強く瞳を閉じ、ただただ耐えていた。
薬で何とかなるレベルだとは思えない。
このまま死んでしまうのではないかとさえ思えてしまう。
「……くっ……いてぇ……」
ベッドの上で身を縮め、頭を両手で抱えるようにしてうずくまる。
ヤベっ……
意識が……
プツン、と隼斗の中で何かが切れた気がした。
その時既に、隼斗は眠りに堕ちていた。
静かな部屋から、小さな寝息が聞こえる。
時刻は、12時丁度だった。
『私は私。
隼斗は隼斗。
世界がどうなろうと隼斗は一人しかいないし、私も一人しかいない。
それは絶対に変わらない。
そして私はアナタの事だけを思ってる。
目の前に見えている隼斗の姿ではなくて、隼斗自身を。
たとえ離れていたとしても、私が思っているのはアナタ、五十土隼斗一人だけ。
自信を持って。
そして、忘れないで』
夢の中。
隼斗は柚子奈との思い出を見ていた。
まさか、この夢でのこの言葉が、隼斗の聞く最後の柚子奈の声になろうとは、この時は思いもしなかった。
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